発達支援専門コラム

小1プロブレムを乗り越える~子どもの小学校生活を親子で楽しむために~

1プロブレムとは?

「小1プロブレム」という言葉をみなさんは聞いたことがありますでしょうか?それは、保育園や幼稚園を卒園した子どもが、小学校での生活になかなか馴染むことができずに不適応を起こしている状態を指します。似た言葉で「小1の壁」という言葉もありますが、こちらは保護者の方が子どもの小学校入学に際して困り感を抱くことを指す場合が多く、このコラムでは子どもの困り感に焦点をあてます。

 小1プロブレムの具体的な特徴は、

・急に学習内容が増えることについていけない

・教師の話を集中して聞くことができない

・授業中に教室から出ていく

・新しい人間関係に適応できず、友達とうまくかかわることができない

・集団生活に馴染めない

といったもの。

 これらはいずれも「学校教育への不適応」であり、「心理面の不適応」につながりやすい状況はあります。上記したような学校教育への不適応は、起きることが望ましくないとは言い切れず、こうした課題に適切に取り組むことが子どもの成長にもつながる場合もあるため、過度に心配せず、適切な対応を心がければよいと考えます。

では、なぜ不適応が起こるのでしょうか。その原因は一つではなく、子どもにとってのさまざまな環境の変化が影響していると考えられています。保育園、幼稚園では遊びが園での生活の中心ですが、小学校では時間割が決められており、それに沿った学習が学校での生活の中心になります。小学校での学習を楽しみにし、学ぶことに楽しさを感じられればいいのですが、大きな生活の変化に戸惑いを感じるケースもよくあります。できない自分に自信を無くし、学ぶこと自体に不安を感じてしまうこともあるでしょう。

変化があるのは学校生活だけではありません。家に帰れば宿題があり、家庭内でも学習の時間を設けることが必要になります。これまでくつろぎの空間であった家庭内でもこうした変化が生じることで、子どもがストレスを感じる場面が出てくることもあります。

1プロブレムを乗り越えるには

保護者や我々学童関係者が気にかける必要があるのは、児童がこれらの課題に一人で取り組もうとした時、心理面での不適応につながりやすいという点です。そこでまず大人が優先すべきは子どもが安心感を持てる場所や関係性を確保(維持)するということになります。

「学校教育への不適応」を改善するための取り組み自体が子どもの「心理面の不適応」につながってしまうこともあります。学校での出来事について家庭で注意する、勉強についていけるように家庭でも追加の勉強に取り組ませる。これらの取り組みは学校教育上の不適応を改善する可能性はありますが、場合によっては、家庭内での安心感を剝奪し、児童のストレスを増大させることにもなりかねません。

いずれにせよ、大人がまず第一に取り組むべきは、「安心できる環境と対人関係の確保」です。「学校教育上の不適応の改善」を考えるのはその後です。

適応の問題は環境と個人の相互作用の中で生じますが、状況全体の改善に取り組もうとするのに個人にしかアプローチできない(状況すら把握できない)というのは不十分な対応と言わざるをえません。

また、個人にアプローチするにしても、これまでの小学校入学までの準備が不十分だったのか、平均的な準備をしてきたにもかかわらず今の状況なのかによっても方針が変わります。

前者であれば学習環境(学習機会)への適応に集中し、学習を促すアプローチも効果があるでしょうが、後者の場合は、学習を促すアプローチ(他に原因があるかもしれないのに児童の努力で無理やり乗り越えようとする)はストレスを増大するだけで結果につながらない可能性が高いはずです。

後者であれば、子どもの性格や発達の水準(遅れの有無)、発達特性(発達障害の有無)など、総合的にアセスメントした上で対応することが望ましいと考えます。なんらかの障害の診断が付くのであれば、学校に合理的配慮を求めることもできます。苦手な部分を把握することができれば、教師とも共有することで、学校での対応も児童にとってより良いものとなる可能性があります。


ここまでを簡単に整理すると...

・不適応がどの水準で起きている問題なのか明確にする

・子どもの心理的な適応(安心できる環境と対人関係の確保)を最優先に考える

・学校教育への適応については、環境要因か個人的要因なのか明確にする

・個人的要因であれば、専門家がアセスメントした方が対応の方針も決まりやすくなる

ここでは大人が優先すべきである「子どもが安心感を持てる場所や関係性を確保(維持)する」ということについて、いくつか有効な対策をご紹介します。

1.子どもの好奇心を大事にする

子どもの「なぜ?」「やってみたい!」を大事にすることで、学習への意欲向上につながります。虫が好きだから図鑑を見たい。いつも通る道に咲いている花の名前を知りたい。好きなもの、気になるものを突き詰めていくことで、自信にもつながります。また、好きな本を読んだり見たりする時間は子どものリラックスの時間にもなります。

集団での生活は周りに合わせることが多くなり、我慢が求められる場面も出てきます。しかし、周りに合わせて我慢するばかりではストレスを感じ、何もしないほうが怒られずに済むという考えに結びついてしまうかもしれません。「やってみたい!」というチャレンジする気持ちを大事にし、行動できた際には褒める声掛けを意識してみるのがよいでしょう。

2.見通しが持てる生活を意識する

これは保育園の生活でも取り入れられています。見通しが持てる生活というと難しく感じるかもしれませんが、一緒に時計を見ながら「〇分になったら片付けようね」など、時間を意識しながら行動ができるような声かけをすることで、見通しを持つことができるようになります。ただし時間に縛られすぎるようになってしまうと過度なストレスにつながるため、あくまでも自分で見通しが持てるようになることが目的です。

3.親子の会話を大切にし、家庭内を安心できる空間にする

はじめての学校生活では、先生や新しい友達とのコミュニケーションがなかなかうまくいかないということはよくあります。そんなとき、ご家庭で自分のじっくりと聞いてもらえたという経験は、子どもに自信と安心とを与え、それが相手の話を聞こうという気持ちにもつながります。自分のことを相手に伝える能力は、子どもが新しい人間関係を築いていくうえで重要であり、それにはまず自分を受け入れてもらえたという経験をすること。それが新たな一歩を踏み出す力に変わります。

きっと子どもは小学校に入学すると「今日こんなことがあって、楽しかった!」と家に帰って報告をしてくれるでしょう。入学後すぐは新しいことの連続で、ワクワク、ドキドキの毎日になると思います。しかし、楽しいドキドキの裏には不安のドキドキもあるはずです。ご家庭での会話の際には、そのワクワク、ドキドキに共感しながらお話を聞いてもらえたらなと思います。

安心できる空間で自分の好きな遊びができるということも大切です。学校で頑張っているからこそ、息抜きができる環境があることでエネルギーをためることができ、また頑張ろう、やってみようという気持ちが湧いてくるものです。

4.相談できる人を見つけておく

 子どもも大人も何か困りごとがあったとき、一人で抱え込まないことが大切です。一人で解決をする力をつけることも大切ですが、誰かに頼る、相談する力をつけることも大切です。お子さんはもちろん、保護者の方が相談できる相手はいらっしゃいますか。誰に相談しようか迷ったときは、ぜひみぎわの職員にお気軽にお声掛けください。経験豊かな保育士・心理士などが対応いたします。

みぎわの学童クラブができること

学童保育所はお子様が放課後を楽しく過ごすことのできる場所、保護者の方が安心して預けることのできる場所であるべきです。「お友達とけんかした・・・」と言って学童に帰ってくる子もいます。学童の職員と話して、おやつを食べて、お友達と遊んで、「あー楽しかった」と言ってお家に帰ってほしいなと思います。小学校に通うことを楽しみにしているお子さんもたくさんいると思いますが、「学童に通うことも楽しみ!」「明日も学童に行きたい!」と思ってもらえるような場所をみぎわは創っています。

 もちろん、安心できる場を提供するだけではありません。学童保育所は児童の主体的な意見や行動を尊重し、その行動の結果を見守る。安全と安心を確保したうえで、心理的な成長を促す場でもあります。現在みぎわ児童館、朱雀みぎわ学童保育所では"みぎわ共和国"という取り組みを行っています。子どもたちのやってみたいという気持ちを大事にし、実際に行動してみる。その結果うまくいかないこともあります。うまくいくためには、もっと周りの友達を楽しませるためにはどうしたらいいか。いろいろなことを考えながら成長していくことのできる場所として、子どもがありのままでいられる時間を提供し続けます。

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