
発達支援専門コラム
保育現場での言語聴覚士の役割 ③吃音

今回は、吃音(きつおん)についてお話したいと思います。
吃音とは、話そうとすると「ぼ、ぼ、ぼくね・・」というようにことばがスムーズに出てこない状態を言います。おおよそ100人のうち5~8人が発症するといわれており、そのほとんどが幼児期の発症で2~5歳頃から始まることが多いです。吃音が始まることを発吃(はっきつ)といって、平均発吃年齢は2歳9か月で3語文以上の多語発話期に増加することが多いようです。そのうちの約8割は自然になくなりますが、残りの2割は吃音を伴ったまま大人になります。消えていく吃音と残る吃音の区別は専門家でもできません。吃音の原因は脳の働きに起因すると考えられているのですが、細かいことは解明されていません。原因が特定されていないため、治療法も確立していないのが現状です。
とはいえ、吃音に対して何も対応できないというわけではありません。吃音が出始めた時に適切に対応することがとても大切です。適切な対応は、本人や家族、また周囲で関わる人たちが吃音の正しい知識を持つことによって可能になります。最も気をつけなければならないのは、「吃音について話題にしてはいけない」という誤った考え方です。大人のこうした対応によって、子どもが知らず知らずのうちに吃音があることに対して否定的な感情を持ったり、吃音を直さなければいけないと思ったりすること、それこそが吃音を悪化させる要因になってしまうからです。
吃音の主な症状は次の3つです。
①「ぼ、ぼ、ぼくね・・・」とことばの最初を繰り返す「連発」
②「ぼーーくね・・・」とことばを伸ばす「伸発」
③ 最初のことばが出づらい「難発」
「連発」は子どもにとって言いづらいわけではなく、正さないといけない誤った言い方でもありません。吃音のある人にとっては自然な話し方です。連発を抑えようと工夫するようになると「伸発」が出現します。そのうち、伸発に対しても気をつけようと頑張りだすと、最初のことばが出にくくなる「難発」が現れます(※)。難発では、出しにくい音を何とか出そうと手足を振ったりするような随伴症状も現れます。ことばがなかなか出なくてとても苦しい状態を何とか抜け出そうと、別のことばに置き換えたり、話すことを避けたりするようになることもあります。つまり、吃音をなくそうと努力することで心理的負担が増大し、それが吃音の症状を悪化させてしまうのです。
(※)発吃してすぐの幼児期は連発の症状が多いですが、伸発や難発症状からはじまるケースも少数ながらあります。
このような状態を招かないためにも、発吃後、保護者や周囲の大人が本人に「連発を伴って話して大丈夫、それが吃音の自然な話し方だよ、連発を出さないようにするとだんだん声が出なくなってしまうからそのままでいい」ということを教えてあげましょう。そして、吃音のある人の周囲の人たちにも同じように教えてあげます。みんなが吃音を伴った自然な話し方を受け入れる環境づくりは、吃音のある人が安心して話しをできるようにするためには欠かせません。
自然な連発であれば、それがどんどん増えて話しにくくなっていくということはありません。そして、いざというときに連発を伴わずに話すこともできます。その状態は吃音のある人にとっていい状態です。一方で、吃音のある人にとって困る状態は、難発によって人とのコミュニケーションに支障が生じたり、自尊感情に影響をもたらしたりすることです。そうならないために、本人や周囲の人が早期から吃音に対する理解を深めていくことが大切です。吃音のある人の自然な話し方を理解すれば、話し方に対して周囲は何も反応する必要はありません。話している内容をしっかり聞いてあげましょう。
吃音があるからといって、生きていくうえで諦めなくてはいけないことは一つもありません。吃音がない人と同じように、どんなことにも挑戦できますし、どんな職業にだって就けます。アナウンサーになっている方もいます。子ども自身が吃音を自分の個性と受け入れて過ごしていけるよう、多くの人に吃音を知ってもらいたいとも思います。吃音のある人も成長の過程で色々な人に出会うと思いますが、自分の吃音について、臆せずに周囲に説明できる人であってほしいと願います。そのために専門家による助言や指導を受けることは意味あることだと思います。気になることがおありでしたら、みぎわには言語聴覚士に相談対応できる体制が整っていますので、いつでもお気軽にご相談ください(担任保育士を通じてでも、みぎわの心理士を通じてでも結構です)。