発達支援専門コラム

療育についての基本を知ろう

このコラムでは「療育」についての基本を、わかりやすくQA形式でご紹介いたします。

Q1 療育(発達支援)とは?   

もともと療育とは、身体障害のある子どもが自立するための援助で、医「療」と教「育」の分野を併せ持つアプローチを意味する言葉でした。現在では、発達の遅れやしんどさを抱える子どもも含めた総合的な支援のことをいいます。

Q2 療育にはどんな内容があって、どんな効果があるの?   

 さまざまな療育プログラムがあり、それぞれにねらいや効果があります。ここでは一般的によく使われているプログラムをご紹介します。

 1. TEACCHプログラム(ティーチプログラム)

 TEACCHプログラムとは、自閉症等のコミュニケーションにしんどさを抱える本人とその家族を対象としたプログラムです。その子にあった環境の整え方や、環境を上手く使えるような方法をともに考えていきます。たとえば、一日の見通しを子ども自身に持ってもらうために、絵カードを使用してわかりやすく説明をするなどがあります。療育施設では、遊びのルール説明やおもちゃの配置など、目で見て理解できるように視覚化されていることが多く、これにはTEACCHプログラムの考え方、支援方法が取り入れられているのです。子ども自身が自分で周りの状況を理解して行動することができるようになるという効果が期待されます。

 2. 感覚統合

感覚統合とは、さまざまな感覚の刺激(情報)を整理する脳の働きのことです。感覚は自分の体のイメージを掴むためにも大切なものであり、自分のバランスのとり方、体幹にもつながっています。発達にしんどさを抱える子はこの感覚を統合する働きがうまく機能しないことが多く、刺激を敏感に感じたり、逆に鈍感だったりします。たとえば、掃除機の音に敏感に反応をしてしまい不快や苦痛を感じたり、粘土やのりの感触が気持ち悪くて触れない、逆に刺激が感じにくくより強い刺激を求めて激しく動き回ったりなど、その子にとってのしんどさが生じます。

こうした課題に対して、療育では感覚統合の要素を入れた遊びや活動を行います。感覚統合を入れた療育内容は、トランポリンやバランスボールを使った遊びといったように体を動かすことが多く、運動中心の療育プログラムでよく取り入れられています。体をたくさん動かすことで発達の土台作りを行い、また体幹を安定させることによって集中力や姿勢保持、加えて苦手な感覚に対して慣れや対処法を身につけていくなどの効果が期待されています。

 3.応用行動分析(ABA)

応用行動分析とは、ある行動とその前後の状況に注目をして支援をしていく方法です。例えば、友達を叩くという行動(不適切な行動)に対して、叩く前の状況と叩いた後の状況から、その叩くという行動がどういう意図であったのかを考えていきます。もしかしたら、友達が楽しそうに遊んでいて一緒に遊びたいと思ったけど、どう声をかけたらいいのか分からずに、叩いてしまったのかもしれません。または、周りからの注目が欲しく友達を叩くことで、周りからの声かけ(=注目)を得ようとしたのかもしれません。もし、友達を叩くことが一緒に遊びたいという合図なら、大人と一緒に声をかけて一緒に遊べたという経験を繰り返せば、叩くのではなく声をかけるという望ましい行動が増えていきます。また、注目を集めたいと思って叩いたのであれば、叩いた時には落ち着いた声のトーンで本人に声をかけ、その子が頑張った時になどにしっかりと反応をしてあげると、叩いて注目を集めようとする不適切な行動は減るはずです。

応用行動分析では、上記の例のように行動の前後からその行動の意図を読み解くことで、適切な行動を促していき、不適切な行動を減らしていくことができるとされています。応用行動分析の考えを軸として、子どもの見立てや支援の方法、プログラムの内容を実施している療育施設はたくさんあります。

 4. 音楽療法

音楽療法とは、さまざまな音を聞いてその音に合わせて体を動かしたり、歌を歌ったりなど、音楽を通して発達をサポートしていく方法です。音楽を中心とした方法であるため、言葉を上手く扱えない子どもにとっても導入がしやすく、楽器を自分で鳴らすことで、自分の気持ちを表現する練習や音に敏感な子にとっては音に慣れる練習にもなります。また、音に合わせて動くことを通して体の使い方を学んだり、誰かと一緒に歌ったりダンスをすることでコミュニケーションを促進することにも効果があります。

 以上のように、療育では様々なプログラムや支援方法があり、それぞれに強みとなる部分があります。療育施設では、これらをうまく組み合わせて実施しているところが多いですが、ある一つのプログラムに特化して行っている療育施設もあります。

3 療育に通う頻度は?    

週に1回のペースが一般的ですが、月23回、週23回と子どもや家庭によってさまざまです。療育は継続的に通うことで効果が出てきますので、保護者の皆さんのご負担を考慮しつつ、「これなら無理なく続けられるな」と思える頻度で通うのがいいかと思います。ですので、月2回でもいいですし、逆にもっと通いたいというのであれば週2回でもいいと思います。ただし、子どもにとって過度な負担にならないかを考える必要がありますので、子どもが無理なく楽しめる頻度かどうかを見極めて、増やす場合は徐々に増やしていくのがいいでしょう。療育先に希望を伝え、相談をしながら決めていっていただければと思います。

また療育先によっては送迎サービスがあり、子どもたちだけで通うところもありますので、療育先を決める時に、親子で通うのか、送迎サービスはあるのかなど気になることがあれば、ぜひ確認をしてみてください。

Q4 遊びばかりでいいの?    

療育に通われている保護者の方から「遊びばっかりでいいのか」というご心配の声を聞くこともあります。療育はその子が抱えているしんどさを自分なりに向き合えるよう、その子の力を伸ばす土台作りを基本としています。その土台作りにはさまざまな「遊び」が大切であり、「遊び」は子どもたちの成長にとって必要となる要素がたくさん詰まっているのです。

Q5 その子にあった療育を選ぶポイントは?    

 1.子どもが楽しめること

子ども自身が「ここがいい」「ここが楽しい」と思える場所でないと続けることが難しくなり、療育の効果が出なくなったり、療育に通うことが本児や保護者の皆さんにとってかえって負担になってしまいます。

 2. 保護者の皆さんの希望や話をしっかりと聞いてくれ、相談に乗ってくれること

子どもたちがここに行きたいと思うのと同時に、保護者の皆さんにとっても「ここに通わせたい」「何かあった時にここになら話せる」と思えるかどうかというのはとても大切です。療育施設は保護者の皆さんとともに子どもたちの発達を支え、見守っていく役割を担っていますので、保護者の皆さんに寄り添って相談を受けてくれる施設かどうかで子どもたちの支援にも影響が出てきます。

 3. その子の課題と、その療育施設が提供している療育内容(プログラム)があっていること

子どもが楽しいと思っており、保護者もここがいいと思っていても、その子の課題にあった療育内容でないと、療育の効果が出ない結果となってしまいます。「Q6 個別活動と集団活動、どっちの療育がいいの?」に、主な子どもたちの課題とおすすめの支援方法を示しましたので、ご参照ください。

 ここまで3つのポイントを紹介してきましたが、まずは①と②の子どもと保護者の皆さんにとってその療育先がいいと思えるかどうかで選ぶのがいいと思います。そして、③の提供される療育内容について気になることがあれば、療育先とじっくり相談をしてみてください。

Q6 個別活動と集団活動、どっちの療育がいいの?   

個別がおすすめのタイプ

理由・主な支援

① 一人で黙々と遊びを続け、周りへの関心が薄い子

集団での関わりよりも、11での密な関わりを通して他者への関心を高めていく。

② 言葉でのやりとりがまだまだ難しい子

1対1で何度も同じ言葉を繰り返し聞いたりすることで、言葉の獲得を促す。

③ 自分の気持ちを素直に出せない子

個別でのやりとりを通して、どのように自分の気持ちを伝えていけばいいのか、自分なりの伝え方を身に着けていく。

④ 周りの刺激に対して敏感な子や衝動性が高い子

集団ではどうしても刺激が多いため、まずは落ち着いた部屋で、その刺激への感度の高さについてどう対応をしていくのか、その工夫の仕方を身につけていく。

⑤ ルール遊びは難しいが、集団の生活の中では動けている子

周りを見て動く力があるため、一見すると集団内では動けているが、実はルールや状況の理解があまりできていない可能性があるため、その子が受け取りやすいような説明をして理解を促していく。

集団がおすすめのタイプ

理由・主な支援

① 友だちへの関心は高いが、うまくコミュニケーションが取れない子

大人と11でのやりとりでは困り感はないが、同年代の友だちとのやりとりがうまくいかない場合には、実際にその小集団の中で職員に介入をしてもらい、うまくいった経験やスキルを身に着けていくことが大切になってくる。そうすることで、徐々に職員や園の先生の介入なしに自分の力でスムーズにやりとりをできるように促していく。

② 家では特に困りごとはないが、園など別の場所での困りごとがある子(個別対応だと困り事がない)

集団の中での困りごとはなにか、どうしてそれがでてきてしまうのかを見極め、その場面に近い状況での体験を通して、実際の場面でもその困りごとに対応できるようにしていく。

③ 自分の気持ちが強く、他者に譲ることが難しい子

個別活動では本人の意思が通りやすいが、集団活動では他者との調整が必要になる。そこで、あえて集団の中で活動をしていくことにより、本人の意思に添えない状況が出てきたとき、自分なりの妥協点を見つけていけるように促していく。

個別と集団でそれぞれにおすすめのタイプをいくつかあげましたが、発達の度合いや子どもの困り事・課題、性格によって、個別か集団のどちらの療育がその子に合っているのかは変わってきます。ぜひ、気になった療育施設に見学をした際に、以下の「Q6 その子にあった療育を選ぶポイントは?」と併せて考えてみてください。

Q7 療育には通った方がいいの?    

 療育に通った方がいいのか、通わなくてもいいのか、全ての子どもに共通した答えはありません。療育が必要な子どもであっても、療育に通うことでその子や保護者の皆さんの負担が大きくなりすぎる場合は、通うことがむしろ望ましくないということもあります。

 それぞれの家庭にあった療育の使い方があります。療育に通おうかどうか迷う場合には、お住まいの自治体の窓口もしくは通われている園に相談をしてみてください。

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